パンフレットより

 おはこびいただきありがとうございます。暖かくなりました。年々桜の開花も早まるようで、我々が小学生の頃は桜の花の下で入学式を迎えるといった図柄が一般的だったのですが、今年などはそんな光景を目にすることは難しそうです。地球の温暖化がすすんでいるということなのでしょうか。

 昨年12月、京都で気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が開催されていた頃、一台の自動車が発売されました。トヨタのハイブリッドカー「プリウス」です。バッテリーとガソリンを上手に使い分けることによって、二酸化炭素の排出量を半分に、一酸化炭素やハイドカーボン、窒素酸化物の排出量を10分の1にした地球環境に非常にやさしい車です。月間千台の生産なので街でこの車をみかけることはまだまだありませんから、地球環境に及ぼす効果という意味ではほとんど無力にちかいものかもしれません。しかし、環境問題というのは「自分ひとりくらい」という姿勢ではなく「自分ひとりだけでも」という姿勢でなく「自分ひとりでも」という姿勢でとりくまねばならない問題です。来年あたりから各自動車メーカーも、天然ガスを燃料とする車など、環境に配慮した車を続々発売予定と聞きます。地球温暖化に少しでも歯止めがかかるようひとりひとりが努力したいもの。

 この現代社会の大きなテーマのひとつである環境問題というものに、「落語」は全く無援であるかのようです。例えば身近なところでゴミ問題。我々は、膨大なエネルギーと資源を浪費し、快適な生活の果てに排出した日常のゴミの処理すらできなくなってきています。ところが、落語の舞台となっている江戸という街は、世界でもまれなリサイクルシステムの確立したところだったようです。ものを修理して使うという考えが徹底していて、ゴミが出にくい社会のこうぞうだったのです。紙屑は漉返紙として回収する「紙屑屋」、鍋や釜は「いかけ屋」(これは上方落語)、古物はもちろん「道具屋」、といった具合。この江戸といった時代は、もちろん自然保護や緑化といったもんだいもにも敏感で、21世紀にむけて我々が学ぶべき点はたくさんあると言えましょう。環境問題はまず「落語」の世界の理解から、というのは強引すぎるかしら。  

 さて、今日は東西の「林家」の若手激突。染二さんは。大阪林家一門のプリンスで初登場。たい平さんは、林家こん平一門の貴公子で当会は二度目。若いはつらつとしたお二人の落語をたっぷりお楽しみください。

第34回『林家染二vs林家たい平』1998年3月29日

演目:くっしゃみ講釈・宿替え(染二)花見小僧・反対車(たい平)参加者:68名